空がオレンジ色に染まる夕暮れ時。
後片付けはほとんど済んで、バスケ部のみんなと、その彼女たちもみんな帰っていった。
あたしは陽葵ちゃんと一緒に家の中のキッチンで、残りの洗い物をしていた。
「凜ちゃん、ごめんね。手伝うてくれてありがとぉ」
「ううん、全然平気。それよりも、はしゃぎ疲れた……」
「アハハッ。陽葵も」
やっぱり陽太の妹だなって思う。
ちゃんと話したのは、今日が初めてだったのに。
もうこんなに気軽に話せるようになるなんて。
しかもあたし、特に女の子は苦手だったのにな。
不思議……。
やっぱり兄妹だな。雰囲気も似てる。
「そういえば陽太のこと、さっきから全然見てないけど……どこにいったんだろ?」
「きっと部屋で寝てるんよ。バーベキューんときに、こっそりビール飲んどったけんね」
「えっ!?いつのまにビールなんて飲んでたの?」
気づかなかった。
陽太め……悪いやつ。
「お兄ちゃんも、悪ぶってみたい年頃なんやない?」
「ふふっ。なんていうか……陽葵ちゃんてさぁ、年下なのに、ものすごく大人だよね」
「ほうかな?」
「うん、大人」
残りの洗い物が終わり、陽葵ちゃんは水道の水を止めた。
「ありがとぉ、凜ちゃん。もうだいぶ片付いたけん、帰ってええよ?」
陽葵ちゃんは、ふきんでお皿を拭き始める。
「ん……じゃあ、陽太によろしくね」
「あ、帰る前にお兄ちゃんのこと起こしてきて欲しいんやけど……。重い物の片づけくらいさせんとね。お兄ちゃんの部屋、3階やけん」
「うん、わかった」
あたしはキッチンを出て、階段を上がっていく。
それにしても大きな家だな……。
3階に上がると、陽太の部屋らしきドア。その前にあたしは立った。
――コンコン。
ノックをするけど、返事はない。
――ガチャ……。
あたしはゆっくりとドアを開け、部屋の中をそっとのぞいた。
「……いた」
陽太はベッドの上にうつぶせになって、寝息をたてていた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)