「肉持ってきたけんっ」
お皿にたくさんのお肉を乗せた陽太が機嫌良く戻ってきた。
「ふたりでなんの話しとったん?」
陽太の言葉に、陽葵ちゃんとあたしは顔を見合わせて微笑んだ。
「優しい人の話」
あたしが言うと、陽太は不思議そうに首を傾げた。
「凜、ほら、食うてみて?」
陽太が割り箸でお肉を挟み、あたしの口元に持ってくる。
「ちょっ……自分で食べれるから!」
そんなことしたら、陽葵ちゃんにヘンな誤解されちゃうじゃん。
「ラブラブ~」
陽葵ちゃんはテーブルに頬杖をついて、ニヤニヤしながらあたしたちを見ていた。
「ちがっ……違うからね?」
「ふ~ん。陽葵は、みんなと水鉄砲でもしてこよ」
そう言って陽葵ちゃんは、テーブルの上に置いてあった水鉄砲を持って、みんなの元へ走っていってしまった。
「絶対、あたしたちのこと誤解してるよね?陽葵ちゃん」
「ええやん、別に。どう思われても」
「はい!?ちっともよくないし!」
あたしはテーブルの上に突っ伏した。
このまえから、陽太なんかヘンじゃない?
どう思われてもいいって冗談でしょ?
本気で言ってるの?
「凜、肉が冷める……」
あたしはバッと起き上がって、お皿のお肉を口の中にどんどん入れていく。
「腹へってたんか。悪かったな」
「おいしっ」
「肉食うたら凜も水鉄砲合戦やろーや」
そう言って陽太は、ニコッと満面の笑みを見せた。
その笑顔を見ると、やっぱり憎めない。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)