外に出てみると、思った以上に広いバルコニーで驚いている。
星でうめつくされた夜空。
風も気持ちよくて、すぐ目の前の海からは静かな波の音が聴こえる。
あたしは星空を見上げながら、バルコニーの先までゆっくりと歩いていく。
「……はぁ……きれーい」
こんな景色が見られるなんて……。
ホント、夢みたい。
「え?咲下……?」
急に声が聞こえて、肩がビクッとなる。驚いたあたしはその場に立ち止まった。
星空から視線をゆっくりと左横に向けると、バルコニーの柵に寄りかかって立っている人がいた。
「え?た、橘くん……?どうしてここに?」
「咲下こそ……。先生が来たのかと思って一瞬ビビッたじゃん」
「あ、ごめんなさい」
橘くんは、あたしを手招きして呼ぶ。
「こっちおいで。ここなら廊下から死角で見えないし、たぶん先生にバレないから」
「う、うん……」
こんなところで橘くんに会えるなんて思わなかった。
どーしよ。
うれしいけど、すっごく緊張する。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)