「お兄ちゃんっ」
やってきたのは、あたしが勝手に陽太の彼女だと誤解していた、陽太の妹。
「凜、俺の妹」
「あ、こんにちは」
あたしが軽くお辞儀をして挨拶をすると、陽太の妹はニコッと笑った。
「こんにちはっ!前に、道で会うたけど覚えてます?」
「うん、覚えてる」
転校してきた日、陽太の自転車の後ろに乗ってた美少女。
てっきり彼女だと思ってた。まさか妹だったなんて想像もしなかった。
「ちょっと、お兄ちゃん!お皿に焼いたお肉とか持ってきてや。もぉ~野菜ばっかり切らせて、全然、彼女食べてないやんか」
「あ、ごめん、凜。いま持ってくるけんな」
「えっと、大丈夫だよぉー……って、たぶん聞こえてないね」
陽太はお皿を持って、慌ててお肉を焼いてる場所へと走っていった。
「ふふっ。気が利かんお兄ちゃんでごめんなさい」
「全然そんなことないよ。優しいお兄ちゃんがいていいね」
あたしの言葉に彼女は微笑んだ。
「はい、どーぞ」
陽太の妹は、オレンジジュースの入った紙コップをあたしに渡して、隣に座った。
「ありがと……えーと……」
「陽葵です」
陽太の1コ下の妹、名前は陽葵(ひまり)ちゃんというらしい。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)