「人が好きやけん」
そんなふうに素直に言える陽太が、素敵だなって思うよ。
陽太の横顔を見つめて聞いた。
「ひとりでいるほうがラクって思うときないの?」
「また寂しいこと言うて……」
陽太はあたしのほうを向いて頬をギュッとつねった。
「痛いよぉ」
「凜はひとりでおるほうがラク?」
「ラクじゃない?だって、ひとりだったら傷つくこともないしさ。誰かに傷つけられて、感情に振り回されることもないし……」
「感情ないんやったら、ただの人形やん」
「人形……ね」
たまにそう思うよ。
傷つくたびに。
悲しいことが起きるたびに。
ひとりで涙を流すたびに。
自分が人形だったらよかったのにって。
感情も持たない、傷つくこともない。
ただの人形だったらいいのにって……。
「傷つけるんも人やけど、支えてくれるんも人やけん」
そう言って陽太は微笑んだ。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)