公園の中にある自販機の前、陽太は先にコーラの缶を買った。
お金を入れたあと、陽太はあたしのほうに振り返って聞く。
「凜は何飲む?」
「おごってくれるの?」
「もちろんっ」
「わーい!ありがと。じゃあ、えーと……」
「コーラやな?」
そう言って陽太は勝手にコーラのボタンを押した。
「ちょっと!じゃあ何で聞いたのよっ」
自販機からコーラの缶を取り出した陽太は、笑顔であたしに缶を渡す。
「炭酸フリフリやろーや!」
「えー!?絶対言うと思ったけどさぁ」
しかも炭酸フリフリって……そんな名前じゃないっしょ。
「まー、いいけど?」
あたしは思い切り缶を振って、陽太に渡した。
陽太は背中の後ろで2本の缶をシャッフルしている。
そしてあたしの前に同時に差し出した。
「凜、どっちがええ?」
「じゃあ……右のにしよっ!いっせーのせっ!」
――カシュッ。
ふたりで同時に缶を開けた。
「冷たぁ……!」
「うーわっ……!」
ふたりとも缶から吹き出したコーラが顔にかかっていた。
「ちょっと!え?なんで2本とも吹き出したの?」
「わからんわ。ミラクルや」
「ふふっ。もぉ~」
あたしは缶に残っているコーラをゴクゴクと飲む。
「ノド渇いてたから、おいしーっ……」
そう言って陽太のほうを見ると、彼はどこか哀しげに微笑んであたしを見ていた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)