「凜ちゃんっ!ほらっ」
ボールを持っていたひとりの男子が、あたしに向かってふわっと軽くボールを投げてきた。
――トンッ。
あたしは咄嗟にボールを受け取る。
「凜ちゃん!こっち、パスッ」
「あ、はい」
あたしは手を上げている男子にボールを思い切って投げた。
あたしからのパスを受け取った男子は、すぐさまドリブルで相手をかわして、綺麗なカーブを描きシュートを決める。
さすがバスケ部……。
隣に立っていた陽太があたしの顔を覗き込んだ。
「凜、実は運動神経ええやろ?」
「よくないって」
「またまたぁ~」
その笑顔に騙されないって思っても、結局、いつも負けてる気がする。
「じゃー、凜ちゃんと俺は味方ねー」
「おまえ、勝手に決めてんなよっ」
「いーじゃん別に~」
「おーい!陽太も凜ちゃんも早くこっち来いよーっ」
本当にあたしバスケするの……?
「ほら、呼んどるよ」
陽太はあたしの手を掴んで彼らの元へ走ってく。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)