「帰るん?」
「あー、えっと、本屋さんにでも行こうかなって……」
「ヒマなら一緒に遊ばん?」
「え?遊ぶってバスケでしょ?あたし出来な……」
あたしの言葉を遮って、笑顔の陽太は言った。
「決まり!遊ぼっ!」
陽太はあたしの腕を掴んだまま、あたしを強引に公園の中へと連れていく。
「ちょ、ちょっ……陽太ってば!」
彼はあたしの腕を掴んだまま、立ち止まった。
「なん?」
「あたしバスケなんか出来ないって!」
「テキトーでええって」
「適当って……言われても……」
「やってみたら楽しいかもしれんやろ?」
陽太が言うと、本当に楽しそうかもしれないと思ってしまうのが不思議だ。
でもバスケなんて体育の授業くらいしかやったことないし。
あたし邪魔じゃない?
「ほら、行こうや」
陽太は乗り気じゃないあたしを、バスケをしているみんなのところに連れていく。
「みんなー!同じクラスの凜やー!一緒にバスケやりよるってー」
陽太の他には、5人の男子生徒がそこにいた。
「おー!やろー!」
「よろしくー!凜ちゃーん」
他のクラスの人たちだ。
彼らの中に、顔は見たことある人もいた。でも彼らの名前は誰ひとり知らない。
「バスケ部のやつら。みんな楽しいし、ええヤツやけん」
「え?てか陽太ってバスケ部だったの?」
「知らんかった?ほんま俺に興味ないよなぁ」
「うん、ごめん。今日部活は?お休み?」
陽太はコクンと頷く。
「やけん、遊んどった」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)