クラス発表と体育館で始業式、そのあと各クラスごとにHR。
今日は午前中だけで学校が終わってしまった。
あたしは高校の正門を出て、駅の方向に歩いていく。
まっすぐあの家に帰りたくない。
出来るだけ家にいたくない。
あたしの門限は夜7時。
どこかで時間をつぶして、7時ギリギリに帰ることにする。
どこ行こう……?
とりあえず駅前の本屋さんでも行こうかな……。
道路を歩いていると、公園のほうから元気な声と音が聞こえてくる。
――ダン、ダンッ。
ボールを地面につく音。
その場に立ち止まって公園の中を見ると、数人の男子生徒がバスケをしていた。
うちの高校の制服だ……。
その中のひとりの男子生徒が、立ち止まっているあたしに気づいたようだった。
「おーいっ!」
そう叫んで手を大きく振ってるのは、目を細めてよく見ると陽太だった。
あたしは軽く手を振り返して、そのまま道を歩いていく。
本当、いつ見かけても陽太って楽しそうだな。
なんであんなにいつも元気なんだろ。
「あ……」
数メートル先の交差点の信号が、赤に変わりそうなことに気づいたあたしは走ろうとした。
そのとき、
――パシッ。
後ろから左腕を掴まれる。
振り返ると、そこにいたのは息を切らした陽太だった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)