くぼっちは何か言いたげな顔で、黙ったまま俺を見つめる。
「なんだよ?」
「本気でそう思ってる?あの状況で吉野更紗に何も感じなかった?」
俺はコクンと頷く。
「あーでも……ふわっとバニラみたいな甘い香りしたけど」
「匂い聞いてんじゃねーよ!」
「ハハッ」
「フハハッ」
くぼっちと俺は笑い合った。
「……ホントにおまえ、咲下しか見えてねーんだな」
「他の子のこと考える余裕なんてねーの」
「一途だね~おまえは。どんだけ好きなんだよ……咲下のこと」
俺は振り返って窓の外を見つめる。
「わっかんねー。でも……」
「でも?」
「いつのまにか大きくなってた」
心の中で。
咲下を想う気持ち。
「あの頃よりもずっと……」
「あの頃って……?」
首を傾げて聞いたくぼっちに、俺は微笑んだ。
――忘れることのない
遠いあの日
“涙星”
ふたりだけが知る
秘密の記憶――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)