宿泊しているホテルでの3日目の夜。
時刻は9時を過ぎたところ。
10時の就寝まであと1時間をきった。
パジャマに着替えて、各自部屋で自由に過ごす時間だ。
あたしはお財布を持って、部屋を出ていこうとする。
「あれ?咲下さん、どこ行くのー?」
「ノド渇いたから、ジュースでも買いに行こうと思って。みんなは何か飲む?」
「ううん、平気ー。いってらっしゃーい」
「いってきます」
――パタン。
パジャマ姿のまま部屋を出て、ホテルのエレベーターの前にある自販機コーナーまでスリッパで歩いていく。
結局、橘くんとは班も違うし、周りにいつも誰かしら男子がいるし、自由行動でも一度も会えなかった。
それは仕方がないことだけど、やっぱり少しだけでも橘くんと話したかったなぁ。
ジュースの自販機の前に立ち、お財布を開けた。
今日お土産屋さんで買った星砂のキーホルダーをお財布の中に入れたままだった。
キーホルダーを見つめて、あたしは呟く。
「幸せを呼ぶ、願いが叶う星砂か……」
橘くんと話がしたいです……なんて心の中で願ってみる。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)