「くぼっち、サッカーしてたんじゃねーの?」
「橘がここにいるって吉野更紗に教えたの俺~」
「……あっそ」
「そんで気になってこっそり見に来たわけさ」
「サッカーやってろよ……」
くぼっちはベッドの上に寝っ転がって、吉野からもらったチョコの箱を手に取って見つめる。
「あの子、橘のことがまだ好きなんだな」
「友チョコって言ってたけど?前みたいに普通に話したいからって……」
そう言って俺は、閉めた窓にもたれかかる。
「ふーん。友チョコねぇ~」
くぼっちは、ニヤニヤしながら俺を見つめる。
「なんだよ?」
「保健室のベッドで……やらしいんだからぁ」
「はぁー!?」
「ベッドでイチャイチャ始まっちゃったら、どーしようかと思って焦ったわ~俺」
「始まるわけねーだろ……ったく」
アホらしっ。
「だって吉野更紗だぜ!?あの状況でよく我慢できたな」
「くぼっち……」
「なぁに~?」
「最低だな」
「だって、おまえ……!」
「彼女のこと大事にしてるって今朝、俺に言ってたくせに……」
そう言って俺は、目を細める。
「いや、おまえ、そりゃーさ、俺は彼女いるからぁ~そんなこと絶対しねぇけどぉ~」
「なに、うろたえてんだよ?」
「全然うろたえてねぇし!」
くぼっちは、ベッドから勢いよく起き上がった。
「くぼっちの彼女、かわいそ~」
「だから、俺はそんなことしねーって!」
「ホントかよ?」
焦ってるくぼっちを見るのは、なんだか面白かった。
「ホント!ま、俺の話は置いといて!つか、橘いま彼女いねーじゃん。俺がおまえの立場だったら……っていうより、男だったらみんな考えることは一緒だろ!」
「俺、彼女いねーけど、好きな子いるんですけどー」
くぼっちは俺をジッと見つめる。
「……おまえさ、本当に男?」
「好きな子じゃなきゃ意味ねーもん。そーゆーの」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)