逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



吉野はベッドの横に立ち、俺の顔を上から覗き込む。



「橘くん、具合でも悪いのぉ?」



「昼寝……しに来ただけ」



「そっかぁ。お昼寝の邪魔しちゃって、ごめん」



俺はいま、吉野が普通に話しかけてきたことに少し驚いている。



修学旅行以来、ずっと避けられてる気がしたからだ。



「で、どした?」



俺は起き上がって、ベッドの上に座り直した。



「ちょっとだけ時間いい?」



「うん」



吉野は俺の隣に来て、ベッドの上にちょこんと座った。



「こうして話すの……沖縄のとき以来ね」



「あぁ……うん……」



修学旅行のとき、俺は吉野に呼び出されて……



『吉野……どした?』

『橘くん、あのね……話したいことがあるの』



吉野と俺は、同じクラスになったことは一度もない。



ただ、1年のときに、それぞれクラスで学級委員をやっていて、



委員会では何度か隣の席になったり、顔を合わせれば話をしたりする程度の仲ではあった。



2年になってからも、たまに廊下とかで会うと吉野のほうから話しかけてくることはあったけど、



まさか吉野が俺を想ってくれていたなんて、考えたこともなかった。



『橘くんが好き』



修学旅行のとき、俺は初めて吉野の気持ちを知った。



『1年のときから、ずっと好きだったの』



あの時、いきなりの告白で驚いたけど、俺は正直に自分の気持ちを話した。



『ありがと……吉野の気持ちはうれしいけど、ごめん。俺、好きな人がいる』

『そっか……うん、わかった……』



あれから学校で会っても、吉野は俺のことを避けてるみたいだったし、前みたいに話さなくなった。



だからいま、吉野がここにやってきたのも、



普通に話しかけてきたのも、少しびっくりしている。