「あんま覚えてない」
そう俺が言うと、くぼっちは俺の頬をツンツン人差し指でつつく。
「これだからもぉ……モテる男って嫌よねぇ!バレンタインデーを余裕で過ごせるのはモテる男だけ!」
またオネェ口調……。
「いいじゃん、くぼっちは。それ、彼女からチョコもらったんだろ?」
「ふふっ。うん。もらった。本命チョコ!義理チョコじゃないよ?本命チョコ!」
「よかったね、おめでと」
「なにその棒読み」
「いやいや。うらやましいなって思って」
「なんだよ。橘は今年もどーせ数え切れないくらいチョコもらうんだからさぁ。うらやましがるなよ」
だって……うらやましいよ。
想い合えるって、本当に奇跡だよな。
好きな人が、自分を好きって……。
「くぼっち……」
「ん?」
「彼女のこと大事にしろよな」
そう俺が言うと、くぼっちは微笑んだ。
「あぁ……言われなくても、ちゃんと大事にしてる」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)