「なんかさぁ、あっというまだよね」
同じ班の女の子たちが歩きながら話している。
「楽しいけど時間すぎるの早いよ~もう3日目とかさぁ」
そう。
修学旅行の日程も、いまはもう3日目の自由行動の最中だ。
同じ班の子たちが言うように、時間が過ぎるのが早すぎる。
橘くんとは、ほとんど会話することもないまま、このまま修学旅行も終わりそうな予感がしている。
「咲下さん?どーしたの?さっきからボーッとしてない?」
同じ班の女の子が、あたしの顔を横から覗き込んだ。
「ううん!大丈夫」
あたしは慌てて同じ班のみんなに笑顔を見せる。
「あそこのお店でお土産買おっかぁ」
そう言って同じ班の女の子が走り出す。
「咲下さんも、早くっ」
「うんっ」
同じ班の女の子たちとは、ホテルの部屋も同じで。
修学旅行の定番のまくら投げもしたし、みんなの恋バナなんかも聞いた。
あたしも「好きな人いないの?」と聞かれたけど、「いない」と答えた。
あたしは……橘くんが好きとは言えなかったことに、少し罪悪感を覚えた。
みんなが本音で話す中、あたしだけ。
やっぱり怖くて言えなかった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)