「咲下からの手紙、読み上げるぞ……」
担任は、服のポケットから白い封筒を取り出した。
俺は席に座ったまま動けなかった。
うつむき、目を閉じて、担任の声に耳を傾ける。
「2年3組のみんなへ。
私にとってこのクラスは、とても居心地がよくて、
もう、このクラスでいられなくなるのがとても残念です。
このクラスで高校を卒業できたら、よかったって。
そう思えるくらい、みんないい人たちばかりで楽しいクラスでした。
こんな私に優しくてしてくれてありがとう。
合唱コン、優勝してね。遠くから応援しています。
みんな元気で。さよなら……咲下 凜」
“さよなら”
その言葉を聞いて、俺は席を立ち上がる。
「橘?どうした?」
担任とクラスのみんなが、一斉に俺の方を見る。
「俺、行かないと……」
そう呟いて、俺は教室を飛び出した。
「おいっ!橘っ!」
担任の叫んだ声も無視して、俺は廊下を全力で走っていく。
なんで一言も言ってくれなかった?
前からわかってたんだろ?
どうして何も……言ってくれなかったんだよ。
咲下……。
咲下……っ!
涙が込み上げてくる。
咲下にもう二度と会えないなんて、やだよ。
そんなのやだよ。
階段を駆け下りて、下駄箱で靴を履きかえようとすると、
俺の靴の上に、手紙が置いてあった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)