その日幸枝はお茶の支度をしていた

支度を終えて奥座敷に入ると夫の国夫が困った顔をして座敷をうろうろしていた

「あら、あなたどうなさったんです?」

「困った事になった…あ…あの子達は帰ってきたか?」

「はい、今し方…楽しかったそうですよ」

「そうか、明日からはうんと働いてもらわんと…」

「そんなに忙しく働かせなくても…まだおかよより年下なんですから」

「わかっとる!そいばってんそのために連れて来たとやろうが」

「私は奉公人でも自分の娘同様にします、学校へも行かせるし…お稽古ごともあの子達が望めばさせてあげます!私も小さい時から辛い思いをしてきたのです…あの子達にかわいそうな思いはさせたくありません」

「わかった、わかったから…それより困った事があると言っただろう」

幸枝の勢いに国夫はいつも負かされてしまう

しかしながら幸枝がいたからこそここまで来れた事は国夫もわかりきっていた