「奴隷として売られ、こき使われ、それでも私たちは、必死にその環境の中で耐え続けました」
お互いを励まし合い、いつか、いつか四人でここから逃げ出そう、と。
「けれど、その悲劇はある日突然、起こったんです」
「……悲劇?」
ええ、とリオルは言う。
唇を噛み締め、俯く。少し、震えていた。
「その日、私はいつも通り屋敷内を掃除していて、そしたら突然、怒鳴り声が聞こえたんです。少女の叫び声も、聞こえました」
聞こえてきた声は、よく知っていた。
胸騒ぎが一瞬にして襲い掛かる。
「サイとアゼルもそれに気づいて、私たち三人はすぐに声のする方に駆け付けたんです」
そこはホールで、他にも何人かの奴隷が憐れを含んだ瞳で、彼女――シェリーを見つめていた。
「彼女は叫びました。このペンダントだけは渡せない、と」
自分の存在を示してくれる、唯一の物。
大好きなエルシーから貰った、唯一の宝物。
「……奴隷は、主に逆らってはいけない。これは暗黙の掟です」
けれど、彼女はそれを破ってしまった。
( そいつを渡せ! )
ホールに響く、その男の怒声。
( いやよ! これだけは、渡せない! )
絶対に渡すものか、と力強くペンダントを握り締め、体を丸めてそれを隠す彼女。
「主は言いました。奴隷の分際で逆らうのか、と。そして続けて言ったのです。何の価値もないガキが、と。価値を失ってしまった存在になってしまったからこそ、そのペンダントは自分たちに必要だったんです」
そこから先は、悲惨なほどに、時がゆっくりと流れたかのように感じた。
悪夢であってほしいと何度も願ったけれど、それは叶わなかった。