「あのさ、リオル」
ミルクティーを作りながら、ウィズは口を開けた。
はい、と彼女は答える。
「君のその烙印には……」
魔法がかけてあるのかい、とまでは言えなかった。
けれどリオルはどうやら彼の言いたいことが分かったように、口を開ける。
「魔法がかかっています。何をしようと、この魔法を解けなければ、消すことは出来ません」
「……それをかけた魔法使いは、男性か女性、どちらか知っているかい?」
( ごめんな )
今でも鮮明に覚えている、あの魔法使いの顔。
悲しそうな紅い瞳に、悔恨の言葉。
「ウィズさんにそっくりな、男性の魔法使いでした」
ぴたりと彼の手が止まる。
やっぱり、とリオルは心の中で呟いた。
あの魔法使いは、きっとウィズ様の家族。
ウィズ様を責めたい訳じゃない。
あの魔法使いを責めたい訳でもない。
彼が命令されて烙印に魔法をかけていることは、分かってる。
そうだと分かっていても、心の中で蠢(うごめ)くこの感情は、消えない。


