( 今夜、また私は汚れる。 もう、いやだよ )

あの日、あの時、その言葉を思わず口から溢していなければ、今も前の主のもとにいて、けれど彼ら二人は、生きていたに違いない。

( 汚れるって、どういうこと? )

心配させないように、二人には秘密にしていたのに、本当に、失言だった。

( まさか……デイジー…… )

私にあの力がなければ、きっと汚れることなんて、なかったんだ。

( ……ここから逃げよう、二人とも。 サイも限界がきてる。それに俺は、デイジーがこれ以上傷つくのなんて嫌だ )

( ……そうだな。 デイジー、逃げよう )


ダメ。脱走なんて、ダメよ。
だってそのせいで、二人は―――……。

………全て、私のせいだ。
私がいやだなんて言ったせいで……。

ごめんなさい、本当に、ごめんなさい。


「アゼル……サイ……」

ゆっくりと、目を開ける。眠っていたが、思わず二人の名前を呼んでいたらしい。


「大丈夫かい、リオル」

柔らかい声が、すぐ傍から聞こえてくる。
気づけば彼女は今ベッドにいて、そして彼はそこに座っていた。

「怖い夢でも見たのかい」

優しく、ウィズは彼女の涙を拭う。