偽者お姫様




リオルは驚いているシンデレラを一瞥し、優雅に紅茶を飲んでいた男性へと目を向けた。


この人が、国王――。

直感的にそう思った。

カップを置き、彼は立ち上がる。
リベルの烙印を見てもさほど驚くことはなく、どこか納得しているようだ。

「僕はクロード。 この国を治める者だ」


「リオルです。湯殿をお借りしてしまい、申し訳ありません。それにドレスまで……。ご迷惑をおかけしました」

深々と彼女は頭を下げる。


「以前あたしが使っていたものですが……サイズがぴったりでよかったです。残しておいてよかったですね、クロード様」

ふわりと彼女は微笑む。
ああ、と彼も微笑んだ。


「あの、それで……その烙印はもしかして……」

おそるおそる、シンデレラは訊ねる。

「はい、もちろん奴隷の証です」

「今の“主”は、魔法使いであるウィズかい?」


はい、と彼女は答える。


( 傷だらけになった少女を、引き取っているんだ )


伏し目がちにそういったウィズの姿を、クロードは思い出した。