リオルは客間に案内され、湯殿へと続く部屋へと連れて行かれる。

「着替えはこちらへ置いておきますので」

そう言って、メイドの者は一礼し、その部屋を後にした。

シンデレラは温かい紅茶を用意すると言って、部屋を出て行った。

一人になったリオルは、静寂さに包みこまれる。


「優しい、お姫様」

ぽつりと、彼女は呟いた。
鏡台の前へと立ち、己の姿をじっと見つめる。


彼女は優しい、お姫様。
そんなお姫様は、きっとたくさんの人々に愛されている。


刹那、無情であったリオルの瞳が、冷たさを放つ。


「……彼女は、私の考えを理解できない」


他人にも優しい彼女は、きっと私のことを、冷たい人だと思うに決まってる。

愛される者は、幸せな者は、絶望を知らない。
彼女だって、きっと知らない。


するりと、リオルは巻かれていた眼帯を取る。
露わになった、S-02という焼印。

「……醜い顔」


けれど一生、この醜い証(あかし)は消えない。