「それにこの黒猫さんが、不吉を招くなんて考え方も、間違ってます」

「だがその黒猫の瞳は恐ろしいほど不気味な紅だ! そいつは化け物だ!」


不吉を招くと言い続けた次は、化け物扱い。
まだ気付かない彼らは、とても哀れな人々。

何の思いも込められていない、無情な瞳を、リオルは貴族たちに向ける。


「漆黒の毛色に、紅い瞳。 一目見ただけで、簡単に分かるというのに」

ボソッと、彼女は呟いた。


誰もが羨む、〝魔法使い〟という存在。
けれどそれはあまりにも、辛い存在。

( ごめんよ―― )

あの魔法使いも、そうだったもの。