偽者お姫様





左右が木々に囲まれている小道を、少女と一匹の黒猫が歩いていた。

ふとウィズは立ち止まる。

「どうしたんですか?」

リオルもまた、足を止めた。

赤い瞳をした黒猫は、何か思い煩っている様子だ。

あっ、と彼女は何かに気付いたかのような顔をする。


「歩くのが疲れたんですね」

そう言いながら、黒猫である彼を抱き上げる。

「えっ、違……」

「さあ、行きましょう」

「リオル、僕は疲れてなんか……」

「このまま真っ直ぐですよね」

ウィズの言葉など全く聞いていおらず、彼女は再び歩き出す。

はぁぁ、と彼は深いため息をついた。

ただ昔のことを思い出しただけなのに……。
あの呪わしい、過去の記憶を――――。