偽者お姫様




「リオル、掃除なら後でいいから」


「でも……」


「先に服を買っておいで」


今彼女が来ているのは、ウィズの服。
小柄なリオルにとって、彼の服は大き過ぎてぶかぶかだ。

パチン、とウィズはフィンガースナップをする。

刹那、ぶかぶかである彼の服は、可愛らしいワンピースへと変わる。


「その魔法は0時を過ぎると消えてしまうから、明るいうちに行っておいで」


「…でも、服なんて――」


「奴隷には、とか言わないの」


ウィズがリオルの声を遮った。

ほら、と彼女にお金を渡す。


「ウィズ様は行かないのですか?」


「……ああ、行かないよ」


行くことなんて、駄目なんだ。