諦めた、とでも言うかのように彼は息をつく。

「もう様付けでもいいよ」

これ以上、彼女を思い苦しませたくはない。


「でも堅苦しい言葉づかいは、お願いだからやめておくれ」


「……ウィズ様がそう言うのなら、そうします」


先ほどよりはまだマシだが、けれどそれでもまだ敬語だ。
敬語は譲れない、という彼女の表情をみて、ウィズは小さくため息を零した。


そんな彼を余所に、リオルはベッドから出る。


「掃除から取りかかりますね」

は? とウィズは固まった。

「掃除用具のある場所、教えて下さい」


「掃除は自分でできるから……」


「ウィズ様自身が掃除をするなんて、とんでもないです。主の身の回りの仕事をするのは、私の役目ですよ?」


奴隷の掟、というものだろうか。
はぁ、とウィズは頭を悩ました。