階段を下り玄関へ向かおうとするとキッチンから母親が出て来た。


「あっ…おはよう。ご飯食べる?」


バツが悪そうに話しかけてきた。いつものことだが慣れることはない。


「いらない」


そう言うと、母親と目を合わすことなく玄関のドアを開けた。




―バタン―


ドアを閉まったのを確認するためか、それとも母親の存在が気になったのか、後ろを振り返る。


当然のように閉まったドアしかそこにはない。


(いつものこと…)


そう自分に言い聞かせながら小さくため息をつく。


いつも…とは少し違う沈んだテンションで駅へ向かった。


そのせいかいつもより1本電車に乗り遅れてしまった。