そして緋狭さんは、鋭い目を俺に向ける。
「お前達は旭から各務翁の持ち物の一部を譲り受けたはず。そしてそこには、レグの日記の断片があったはずだ。天使の…エノク語で書かれた」
「もしかして…黄ばんだ紙切れのこと?」
遠坂の声に、緋狭さんは頷いた。
「それに書かれてあることこそ、レグの狙い。そしてそれを実行されれば、各務翁の望みは絶たれる。それに目をつけた鏡蛇聖会が奪還に動いている。煌、お前が負傷した時、刺客が何か言ってたろう?」
「ああ、何か判んねえけど、寄越せって言ってたような」
「此処は3つの意思が混ざり合っている。それを紐解けば、真実は見える。だが…如何せん時間がない」
緋狭さんは眉を顰めて、芹霞を見た。
「芹霞の邪痕が蘇れば、儀式を潰せないのだ。
まさか、蘇るとは私も考えてはいなかった。向こうも、余程坊を手に入れる為に、芹霞を廃しようと必死だったのだろうな」
「緋狭姉、儀式って何?」
「食べることだよ」
「は?」
「"聖痕(スティグマ)の巫子"にとって大切な者に選ばせる。
"生き神様"を食らって新たな"生き神様"として巫子と生きるか。
"生き神様"に食らわれて、"生き神様"の中で巫子と生きるか」
「はああああ!?」
声を上げたのは、芹霞と煌と遠坂で。
俺と玲は険しい顔をして。
「あの女……櫂にそんなことさせようとしたのかよ」
「何が永遠なのよ」
煌と芹霞が、同時に叫ぶ。
「「許せないッッ!!!」」