「あたし、あたしね……玲くんが怖かったの……!!」
「……そうか」
「居るのに…呼んでも来てくれない、煌も怖かったの……」
あたしの身体はぶるぶる震えていて。
「だけど……あたしが怖がったら、あたしが嫌ったら……いけなくて。あたしだけ……知らなくて、あたしだけ非力で……今でも本当は怖かったの……!!! でも怖がったら、そうしたら……皆が離れて行っちゃって、ばらばらになっちゃう…気がして……」
緋狭姉は何も言わずに、ぽんぽんと肩のあたしの背中を叩いた。
「好きなのに……あたし皆好きなのに、どうして怖く思っちゃうの…? おかしいのかな、あたしの好きって……変なのかな。……ねえ、何が本当の"好き"なの…? あたしよく判らないよ……。……皆勝手に、知らないような男の顔になってきて……あたしが理解できない部分見せてきて……。差が開く……。置いて行かれちゃう……」
ぽんぽん、ぽんぽん。
「男って何? 女って何?
どうして今まで通りじゃいけないの?
あたしは贅沢すぎるの……?」
ぽんぽん、ぽんぽん。
「ねえ、お姉ちゃん……」
「坊のことか?」
あたしは頷いた。
「櫂までも…あたしの知らない男の顔をしてたの。術にかかってようがかかってまいが……そんなの関係なく……全然あたしの知らない顔してたの」
あたしは泣きじゃくる。
「あたし……櫂と離れなきゃ」
「何故……?」
「また、あんな顔見るの嫌だ。あたし以外に"永遠"誓うのが嫌だ。あたしが信じていた"永遠"は……あんな簡単に捨てられるもので…櫂は……あたしのものじゃないっていうの……思い知ったの!!!」
「………」
「何が本当なのかもう判らないの。目に見えるものが信じられなくなったの。それに……櫂が怖くて仕方が無いの」
「………」
「もう駄目だ。あたし、もう櫂と離れなきゃ」

