あひるの仔に天使の羽根を


「~~ッッッッ!!!

そ、それよか桜はどうしたんだよ!!!」


「そ、そうだ、玲くん、桜ちゃんは!!?」


あたしを助けに来てくれた桜ちゃん。


いない、何処にもいない!!!


慌てるあたしに、緋狭姉は静かに言った。


「大丈夫だ。桜は既に坊の元に行かせてある。傷は大丈夫だ」


あたしは胸を撫で下ろす。


何故かは判らないけれど、緋狭姉が大丈夫だと言うから、本当に大丈夫な気がしているのが不思議だ。


その時、玲くんが、


「……判りました。では僕達も戻りましょう、櫂の処へ」


そうすくりと立ち上がって、会釈をすると、


「……男前になったな、玲」


緋狭姉は満足気に笑って、玲くんの頭をくしゃりと撫でた。


「緋狭姉、玲くんは元々男前だよ?」


あたしが呆れたようにそう言うと、


「悪かったな、男前じゃなくて」


煌が拗ねた。


「ほら。まだ歩けねえだろ、また運んでやるから」


そうぶっきら棒に言いながら、差し伸べられたその手。


だけど…だけどね。

正直な処、今はね……

気が緩んできた今はね……。




「芹霞は私が担ぐ」



突然緋狭姉がそう言い出し、片手で軽々とあたしを肩に担いだ。