あひるの仔に天使の羽根を



直で触れる芹霞の身体。


芹霞の布地で阻まれる体温がもどかしくて。


――クルエ


僕は、芹霞の耳朶を舐め上げ、一瞬身体を逸らしたその隙に、首筋に吸い付きながら、ネグリジェを肩からずりおとしていく。


大きめの……扇情的すぎた衣服を脱がせていく。


一際大きい恐怖の声を上げた芹霞の口を片手で塞ぎ、僕は柔らかな白肌に蹂躙の痕をつけていく。



――クルエ



ねえ、芹霞。


恐いでしょう?

僕が気持ち悪いでしょう?


だから拒んで?

拒んで呼んでよ、いつものように…櫂の名を。


――クルッテシマエ


止めてよ。


お願いだから、"僕"を止めてよ!!!


「――!!!」


僕の動きを止めたのは、皮肉にも僕自身で。


白肌に刻まれた、相反する漆黒色の模様。


それはまるで櫂の闇色のように、手を広げて芹霞を守ろうと。


「や……だ、見ないで、見ないで!!!」


芹霞がそれを腕で隠すようにして、震えて泣きじゃくる。


恐怖だ。


僕に対する以上の、恐怖。


「これ……」


「櫂……かもしれない、判らない……!!!」


まるで黒い樹木のような闇の痕跡。


まるで自分のものだというように自己主張する模様。


肩にある傷や、殴られたような痕に気を馳せるより、僕の知らぬ間にこまで侵蝕していた闇色の存在に怒りを覚えて。



それが……


僕の理性を狂わせて。