あひるの仔に天使の羽根を

 
これ以上続ければ完全に僕は憎悪の対象になるだろう。


ぎゅっと眉間に力を入れて目を瞑り、僕は尚一層芹霞に愛を注ぎ込む。


行為をやめてはいけなかった。


全てが可愛くて、愛しくて溜まらない芹霞。


触れる場所から、蝕むように僕の身体全体に拡がる……毒のような熱情。


"僕"が満たされる…蕩ける感覚があるのに、物足りないと感じてしまうのは、そこに芹霞の心がないからだ。


欲しいよ、芹霞の心。

頂戴よ、僕だけの愛情。


だけど今、それを望んではいけなくて。


熱く、荒く乱れる僕の吐息。


微かに漏れ聞こえる、芹霞の抗する声に泣きそうになる。


苦しいよ、苦しい。


早く――

呼ぶんだ。


苦しい息の中から、芹霞にとって呪いのような愛の言葉を囁く。


「……好き……だ…」


愛という名の元に、全てを破壊しようとしている僕に恐怖して、早く呼んでよ、君の大事な櫂の名前を。


それでも。


震え上げながらも、芹霞の口からは櫂の名前が出ない。


僕の心は焦りも混ざる。


――カイヲヨバセナイ


聞こえるのは誰の声か。


振り切るように僕は、芹霞の舌に吸い付いて貪る。


僕の本能が目覚めてくる。


駄目だ、芹霞に櫂の名前を呼ばせないと!!!



――セリカハボクノモノダ



鬩ぐような心の声に、僕は苦しくて。


芹霞の泣き顔に溜まらなくなって。