あひるの仔に天使の羽根を



「れ……んん!!? や……!!!」


あたしの抵抗と、玲くんの強さでドアがギシギシ悲鳴をたてて。


止まらない。

玲くんが止まらない。


片手であたしの顔は上向きに固定される。


乱れた熱い吐息の中から、彼の熱の塊があたしの唇にねじ込まれた。


性急で乱暴過ぎる、口内の蹂躙。


卑猥な粘着音を響かせて、無理矢理搦め捕られるあたしの舌から、熱さと痺れをあたしの身体から引き出していく。


だけどそれは恐怖を煽るもので。


「…僕を……感……じ…て」


殆ど吐息のその声に応えるように――


激しく抵抗したあたしは、難なく玲くんの片腕に制されて、万歳の格好で頭上高く縫い取られてしまう。


「……離……さな……僕の……」


「は……んん、ぅ……」


あたしの抗しようという意思の力まで、玲くんの熱に呑み込まれる。


「…せ…り……」


苦しい苦しい。


「呼ん……で……名…前…」


玲くんの熱情が苦しい。


だけどそれ以上に恐い。


玲くんの"男"が恐い!!!


そんな時、ドアの向こう側で声がして。


煌の声だ、煌が居るんだ!!!


あたしはがくがくする足でドアを蹴りつけ、そして玲くんの唇を噛んだ。

驚いたのか手の拘束を弛めたその僅かな瞬間に、あたしは玲くんを手で突き放すと、ドアを拳でバンバン叩いて叫んだ。


「煌!!! お願い、鍵を開けて!!!」


それは本能的な叫びだった。


ドアノブが外側からガチャガチャ回る音がした。


ほっとしたのもつかの間。


煌の声に被るように聞こえた櫂の声。


それが聞こえた途端、しんと静まり返った。


「煌、ねえ煌!!?」


気配はあるのに、助けてくれない。



煌はあたしを見限ったの?


それとも櫂が……邪魔してるの?

櫂が鍵を閉めていたの!?

こういうことを期待していたの!?


目の前が真っ暗になった。