あひるの仔に天使の羽根を



「……櫂、か」


途端険しくなる端麗な顔。

そしてあたしは腕を掴まれ、真剣な顔を向けられた。


「ねえ芹霞。

櫂にあって僕にないものって何?

同じ肩書き…君は欲しい?」


「は?」


「それで君が手に入るなら、僕…紫堂を継げるようまた頑張ってみる」


「ちょ、ちょっと待って!!! 落ち着こう、ね?」


突然何を言い出すんだ、玲くん。


「十分落ち着いているよ。

櫂が紫堂を放棄したがっているのなら、無理矢理戻さなくてもいい」


「はい!!?」


「ねえ芹霞。僕は――

君が欲しくて仕方がないんだ」


鳶色の瞳が焦れたような色を浮かべる。


「君にとって、もう櫂が恐怖の対象でしかないのなら、それを埋める立ち位置で良いから……僕を選んでよ」


「玲……?」


「櫂を戻す為じゃなく、そんな理由ではなく……僕と付き合ってよ?

僕のことを本気で好きになってよ」


その鳶色の瞳は、ぞくりとする程妖しげな光を湛えて。


「もうね……形振り構っていられないんだ。

優しい男では……いられない」


あたしは――


「僕は――"男"だよ。

だから今夜は…覚悟して?」


本能的にドアの処に逃げた。