「実際会わせたことはなかったけれど、君以外は知っていたと思うよ。ま…若気の至りで……え? 引き籠りなのに出会いは何処? 今は確かに引き籠りだけどさ、前まではそうでもなかったんだよ。櫂が学校に行っている間、仕事を桜に任せれば時間が空くし。外出たら出会いなんていくらでもあるだろう?」


それは玲くんだから言えると思う。

外出してばかりのあたしには出会いがないもの。


「どんな子?」


すると玲くんは、切なげにあたしを見た。


「君に似ていたよ。凄くね……

だから大切にしたいと思った」


繋げた手にぎゅっと力を入れられる。


あたしを通して元カノを思い出しているだろうに、あたしは自分のことを言われているように、どきんと反応してしまった。


「だけど付き合えば違和感が拡がるだけ。

……君とは全然違ったんだ」


玲くん、基準をあたしにするのは間違っているって。

そして玲くんは信じられないことを言った。


「僕ね……いつもフラれるんだ。女の子に」


「玲が? フるんじゃなくて?」


彼は苦笑した。


「君に大見得切って情けないけれど、開始も終わりも、皆女の子任せだ。

僕なりに彼女の望む通りに振る舞って大事にしていたつもりでも、"貴方は私を見てくれないのね"…いつもいつもその言葉で終わって長続きしない」


自嘲気というよりも、天井を見上げる玲くんの眼差しは哀しげだ。


「問題なのは、そう言われても未練も執着もない僕の心。

それなりに盛り上がっていた時期もあったはずなのに、僕が求めていたのはこの子じゃないって思ってしまってる。いつもね」


寂しそうな横顔。ふと思う。


「玲は……本当の自分を見せてないんだね?」