思い出話に花を咲かせる玲くんは、本当に嬉しそうな綺麗な笑顔で。
玲くんがこういう風に穏やかな顔をしていると安心する。
無理せずあたしに自然な笑顔を見せてくれることが嬉しくて。
そうしたら玲くん個人の話もしてみたくなって。
「ねえねえ、玲ってどんな恋愛してきたの?」
和やかな雰囲気だからとついつい聞いてみたら、また玲くんは口にしていたビールをぶーっと噴き出して咽せてしまった。
「ど、どうしてそんな話?」
げほげほ苦しそうながら、詰るような目を向けてくる。
「興味あるから」
正直に応えたら、未だ咳を繰り返しながら、
「興味あるのは……過去の話だけ?」
一体何が言いたいのか判らないあたしは首を傾げた。
「僕自身に……興味はないの?」
僅かに鳶色の瞳が細められた時には、咳も落ち着いたようで。
「あるよ? だから聞いてるし。玲はこんなに優しくて綺麗で、何より女の子を心底大事にしそうなのに、よく女の子が別れに納得したなって不思議で。どんな障害があって終わっちゃったの? 最後は修羅場?」
「何だ…よ、今から……終わり方なんて……」
すこし不機嫌そうな物言い。
しかし言葉は小さすぎてあたしはよく聞こえなかった。
「何でもない」
そう言いながら、何でもありそうに口を尖らせている。
お酒のせいか、玲くんの感情が豊かで可愛い。
思わず口角が弛んだ時、突然あたしの手を握ってきて。
指を絡める恋人繋ぎにして、力を入れたり弱めたりしながら、繋いだ手をじっと見つめて……暫く無言だった。
躊躇いがみてとれる。
言い出せない程、悲惨なものだったんだろうか。
興味本位だったとはいえ、よく考えれば…傷口を抉るような失礼過ぎることを聞いていたことに気づき、前言撤回しようと口を開いたあたしに、玲くんのぼそりとした声が聞こえた。
「最後の彼女は、君が中2の時。
僕が君と同じ年の時だよ」
「!!? え、いたの!!?」
全然気づかなかったあたし。

