「でも意外。玲がそこまで呼び捨てに拘るなんて」


同時になんか可愛い。よしよししてあげたくなる。


「普通だよ。世の恋人なんてそんなもの。男なんて所詮子供じみていて独占欲の塊、特別意識されたくて仕方がない。名前だけでも縛り付けておきたいものなんだ」


口から出る言葉は、子供らしくないけれど。


"恋人"という言葉に複雑になる。


ちょっと饒舌な玲くん、酔っているのかな?


ほろ酔いっていうのは見ていて可愛い。


あたしが知っているのは、極度の酔い方をする奴ばかりだから。


緋狭姉は化け物級のウワバミで…まあ、普段から飲んでも飲まなくても朝から晩まで酔っ払いの言動ばかりだけど。


未成年なのに毎晩酌に付きあわされる煌だって、日本酒の一升瓶を緋狭姉と競い合うように凄い数空けるし、それでも到底緋狭姉の限界には敵わず、最後には泣いて喚いて、緋狭姉に殴られて、本当にぐちゃぐちゃのへろへろだ。


そしてその巨体を奴の部屋まで引き摺り、大量の瓶を始末するのが日課になったおかげで、あたしの二の腕のぷるぷるは、悪化しないですんでいる。


そんな尋常ならざらぬ酔っ払いと生活しているあたしにとって、玲くんの酔い方は、殺人級の色気を抜きにすれば、酷く大人し過ぎる微笑ましいものだけれど、若干緊張しているように思えるのは気のせいなんだろうか。


「ねえ、どうするの、櫂のこと」


玲くん、直ぐに此処を出て行く気もなさそうだから、聞いてみる。


「戻ったの?」


玲くんは堅い顔をして、ふるふると頭を横に振った。


「じゃあどうするの? あと何時間もないよ?」


すると玲くん。


「ねえ芹霞……」


こちらを向いてふわりと笑った。


直前までの鬱めいた表情を見事に払拭して。


「僕と君が会ったのはいつだっけ?」


突然そんなことを言い出して。