元々色白の玲くんの肌は、上気した桜色に艶めいて。


"水が滴った"ままの玲くんは、裸の上半身に白いシャツをひっかけている…久遠みたいな卑猥過ぎる格好で、髪を拭く様が気怠げで、それがまた妙な色気を相乗して。


そして。


ベッドの横の…金庫だと思っていた"冷蔵庫"から、缶ビールを取り出すと、豪快な一気飲みを始めて。


玲くんも、ビール飲むんだ…と吃驚する以前に、


何だか――


上下に動く喉仏をいやらしく感じるのは何故?

やけに"男"を見せつけられている感じがするのは何故?

飲みながら、立ち尽くすあたしに寄越す…その流し目のようなねっとりとした鳶色の瞳に、妙な妖しさを感じるのは何故?


「……飲む?」


玲くん、何を勘違いしたか未成年に堂々とビール渡そうとするし。


しかも。


お酒に弱いのか、目が潤んでとろんとして、更に溢れんばかりの色気を垂れ流し放題にするし。


あたしは、煩悩の海に溺れぬよう、必死に念仏を唱える羽目になる。


普段礼節にしっかりしている玲くんが、あたしにお酒を渡すことも、無防備すぎる"スキ"を人様に披露するのも変だ。


余程疲れているんだろうか。


もう夜だし、寝かせて上げた方が……



――今夜覚悟しておいた方がいいぞ。



何を思い出した、あたし。



違う違う。



付き合ったといっても、それは偽装で…



――芹霞、好きだよ?



大体、玲くんは野獣じゃないし。


何臆しているの、あたし。



――今日の"夜"が楽しみだね。



あれは、お芝居。


わざと言っただけ!!


その台詞の必要性は、依然不明だけど。



きっとその内、自分の部屋に戻るだろう。


今はあたしを心配して、付き添ってくれてるだけだ。




「芹霞……?」



ふわりと、石鹸のいい匂い。


潤んで濡れた鳶色の瞳で、あたしを至近距離で覗き込んできたから、



「お、お風呂行って参ります!!!」


とにかく、玲くんから離れようと逃げ出した。