あひるの仔に天使の羽根を



何かを訴えているようなその眼差しの意味が判らなくて、きょとんと首を傾げたあたしに、


「今だけ、です」


そして目を伏せた桜ちゃんは、あたしから受け取ったサバイバルナイフで、自慢の長い…艶やかな髪を切り落とした。


あたしが密かに羨ましく思っていた、あの麗しい…キューティクル満載の美髪が……床に散っていく。


「な!!!」


はらはらと、舞い落ちる"女"としての象徴。


「髪はまた伸びるけれど、血の穢れは元に戻らない」


そう言い切った桜ちゃんは。


耳下の長さにまで髪が短くなっていて。


元来手先が器用な桜ちゃんだから、ナイフでの即席断髪とは思えぬくらい、綺麗に整えられた男の髪型で。


「もう僕が貴方を血に染めませんから」


大人びた、美しい"男"表情で微笑んだ。


少し――鼻血が出そうになってしまった。


この子、誰?


この美しい生き物、何?


あたしが呆然としている中、桜ちゃんは戦闘に勝利続けたらしい。


しかし気づいた時には、桜ちゃんの表情が険しくて。


「どうしたの? 怪我!?」


桜ちゃんはふるふると頭を横に振った。


「裂岩糸が……顕現出来なくなって」


桜ちゃんの手のひらには、黒い石。