「今だけは……お前にイイトコ譲ってやる。
お前のそんな焦る顔、初めて見させて貰ったからな」
それなのに――。
煌が拳を地面に打ちつけ、外気功を放つ。
地面が――割れた。
「早く行けッッッ!!!」
私は頷いて、その穴から地下に潜った。
馬鹿蜜柑。
あんな引き攣った顔で、無理やり笑いを作って。
そんなに嫌なら、言わなきゃいいのに。
だけど。
だからこその馬鹿蜜柑。
だからこそ、皆に愛される橙色。
狭量で愚かしくて、本当に苛々して仕方が無いけれど。
それでも。
いい奴なんだと思ってしまったことは、
私は言わないでおこうと思う。
絶対あの単純男、いい気になってしまうから。
――桜。僕は今夜……。
これから試練が訪れる。
――絶対不可欠な存在なんだ。
馬鹿蜜柑も、私も。
――だから…手に入れる為に僕は今夜……。
これは玲様の賭けなのだ。
――勝負に出るよ、どんなに蔑まれても。
私達配下に許されるのは、傍観者に徹すること。
どんな心抱えても、動いてはいけないこと。
ならばせめて今は――
己が心が動くまま、芹霞さんを迎えに行きたい。
この道が――
芹霞さんに続いていることを
私が信じる…私自身に祈った。