集団を一掃して走り抜く。


「この"約束の地(カナン)"を覆う半球(ドーム)には、原理的には僕の力みたいな…相当量の電気の力によって"磁場"のようなものを作り、物理的に作用出来る、紫堂のような力までをも相殺し無効化する…プロテクトをかけてたんだ」


パソコンで情報を抜いて、調べていたのか。


「その電力を確保する為に……設計者は、得意分野の重力…"重力子"を用いた。此の地は……一定間隔で地形が変わるんだ。重力子によってね」


「変わる?」


「ああ。お前も、此の地を歩いている時に、足が重くなったり耳鳴りをしたことはなかったか?」


あったような…気がする。


「体調や精神的なものだと片付けていたが…」


「実は僕もそう思ってたけどね。具体的な地形変化のシュミレーションのモデリングはパソコンで再現出来るけど、此処は……垂直になる」


「垂直?」


「此処は基本海に囲まれた円形状だ。だけど"混沌(カオス)"以外で海を見ていないのに…突如崖になり海が見えるときがある。僕はまだ目にしていないけど、桜が目撃している」


「俺も…ある。樒を追いかけた時に」


「そうか。それは道が途切れたのでも変形したのではなく…土地がそこから、過度の重力負荷によって、折れ曲がり垂直になったんだ。それが地形の変化だ。それを感じずにいたのは、僕達の体感する重力制御の影響がある。僕たちは知らず、垂直に対応出来ているんだ」


「地形は終始変形し続けているのか?」


「モデリングして予測する限りにおいては、"約束の地(カナン)"は少しずつ、不規則な部分部分で垂直状態に近づいている。完全な垂直状態になった時、電力と重力が最大値となり、一種の真空状態が生じる。その中においては、恐らく……"約束の地(カナン)"における物理的制約は一切なくなるだろう」


「それはいつだ?」


「恐らく……

明日か、明後日には」


そう、玲は言い切った。


儀式と、祭りに――


重なっているのは偶然か?