あひるの仔に天使の羽根を



途中、遠くで鐘が鳴る音を耳にした。


樒を追っていた時にも聞いた覚えがある。


あの時の俺は、精神的に参っていて。


ふらふらと温室に行って、その後須臾と会って想い合ったんだっけ。


「………」


何で、俺は参っていた?


――……いよう?



「櫂、お前金緑石をつけてないんだな」


建物から出た辺りで、玲がそう訊いてきた。


「…今日ぐらいはな」


「それで……芹霞の石を持つわけか」


それは怒りのような悲しみのような。


「なあ櫂……」


言いかけ、突如玲の言葉と動きが止まった。


玲の視線の先を追った俺も、警戒に表情を硬くする。


「何だ……アレは…?」


凶々しい、澱んだ気が拡がる。


色取り取りの服を着た神父達。

一般人と見られる女達。

ボロ切れを纏ったような男女。


その数は50は下らず……それ処か益々増えているようで。


大乱闘が繰り広げられていた。


殴りあいレベルじゃない。


阿鼻叫喚……本気の殺し合いだ。