あひるの仔に天使の羽根を



俺のズボンのポケットにある石が震えている気がする。


「……!!!」


闇の力が――

また解放された!!?


俺ではない、"誰か"によって。


それは玲も感じたらしく、目を見開いて俺を見た。


俺は頷き、石を握りしめながら意識を沈ませ、その力を辿る。


流れ出る闇の一端を見つけ――


俺から漏れ出る穴を塞いで、逆流させた。


手応えがある。


そんな時、何かが壊れるような騒がしい音と悲鳴がして。


「芹霞!!?」


玲と共に、1つの部屋に飛び込むと、



「な!!!」


洗面台を中心として、辺りが木っ端微塵に破壊されていた。



「神崎が……神崎が居ないよ!!?」



遠坂の絶叫。



感じろ。



芹霞の気配を感じろ。


しかし。


俺は――


先に動いたのは玲で。


俺は――



何故だ?


芹霞の気配というものを……俺は掴むことが出来なくて。


芹霞の危機に、俺は――


「櫂、ぼさっとするな、行くぞ!!!」


前方から玲の声が放たれる。


それが何だか嬉しくて。


俺は玲と共に走った。