あひるの仔に天使の羽根を


「ここは芹霞の部屋だ。

お前に用はないはずだろ」


どこまでも真っ直ぐに向けられる鳶色の瞳。


突き放された俺。


輪の中に入れない俺は、酷い寂寥感に囚われる。


「最後くらい……

せめて今日くらい……

俺を混ぜて貰えないか?」


明日から俺は消えるのだから。


暫しの沈黙。


「まあ今日までは、お前はまだ"次期当主"だからね」


俺に返ったのは、

冷たい……突き刺すような玲の言葉。


紫堂を捨てて須臾を選ぶことを認めて貰えないことより、認められて距離を隔てられる方がこんなに辛いなんて。


もう俺には従弟としても、信頼感はないのか。


玲は"次期当主"を覚悟している。


「だけど……

僕達が調べている内容は言えない」


「なぜ?」


「須臾を愛するお前には酷だ」


「須臾が何か?」


「須臾と言うより、須臾を取り巻くものだ」


それでも――


「まだ俺は……"次期当主"、だろ?」


その名の威を借りてでも。


俺は皆と一緒にいたい。


芹霞と一緒にいたい。


そんな時――


「神崎……妙に遅くないか?」


そんな遠坂の呟きと同時に、



「!!?」



駆け上る嫌な予感がした。