「辛いのは……てめえだけじゃねえ」 桜の声が震えていて。 「皆、皆辛いんだ。 浮かれている奴は誰も居ねえ。 玲様も芹霞さんもだ」 俺は言葉が出ず、暗闇に溶けた桜の声だけを聞いていた。 「今夜―― 玲様は勝負に行く」 「あ?」 嫌な予感がして、低い声が出た。 心臓がどくどく煩くて。 「今夜―― 玲様は芹霞さんを抱く」 そして―― 「僕達は―― 与えられた役目を果たすのみ、だ」 不気味な程に―― 暗闇は黙した。