あひるの仔に天使の羽根を

 

重苦しい静寂が流れる。


そんな時、久遠の声が聞こえた。


それで、初めてこの場に久遠も居たことを知る。



「ここまで貪欲で、愚かな子供(ガキ)だったとはな」



何故か――

怒っているような口調に思えた。


玲くんも同じ気持ちだったみたいで、あたし達は少し身体を離して、櫂のすぐ近くまで歩んでいた久遠を見た。


虚無しか映さない妖麗な顔に、苛立っているような不穏な色が浮かんでいる。


あたしに苛立つなら判る。


だけど何で櫂?


「だから愛想付かされるんだよ、せりに」


久遠は何を言っているの?


何でそこにあたし?


それを受けた櫂は、端正な顔を少し歪ませる。



「お前なんか、"永遠"を語る価値なんてないんだよ」



ずきん。



激しい痛みが心を抉る。



そう言えば。


久遠はあった瞬間から、あたしと櫂の"永遠"を否定していた。


こうしてあたし達の間に永遠が消えた今、彼はどう思っているのだろう。



「オレはお前を認めない」


久遠の口調が剣呑なもの変わり、あたしは目を細める。


あたしは――


久遠から、櫂への憎悪を感じ取った。