あひるの仔に天使の羽根を

 

追いかけようとした時、玲くんが言った。


心に突き刺さるような…掠れた声で。



「じゃあ……僕は傷ついてもいいの?

僕なら…泣いても構わないの?」



え――?



あたしは――

慮外な玲くんの言葉で動きを制された。


今にも泣きだしそうに、傷ついているような…その意志的に抑えられた声音に。



「僕は、煌に負けない程、君が好きだよ?」



そしてその切ない響きが紡ぎ出す、言葉の意味に。



「ずっとずっと、君が好きなんだよ?」


演技――


「君を僕だけのモノにしたくて仕方が無かった」


――なんだよね?


だけど。


今まで、こんなに悲痛に翳る玲くんの表情を見たことがあったろうか。


ここまで辛そうな顔をしてあたしに訴えたことがあったろうか。


もしこれが演技だというのなら。


あたしはきっと、今までと…この先の玲くんの全ての言葉を信じることは出来ない。



あたしは――

演技以上の心を感じてしまった。