「こうなったら強硬策で情報を盗み取るしかない。

だけど普通のPCスペックならば何をするにも人の手がかかりすぎるし遅すぎる。まあ、向こうが早すぎるっていうのが、正解なんだけれど。

それに対処出来る、持ち札で出来る限りの準備をしていたら、突然荏原が来て騒ぐもので、どうしたのか聞いたんだ」


――千歳様が……亡くなりまして!!!



「従医がいなかったみたいで、僕が代わりに…半ば無理矢理荏原についていって、千歳くんの死体を検証したんだけれど、桜が直前に会話したということも考慮すれば、死後30分以内の心臓発作が濃厚だ。恐怖に歪んだ顔つきだったね。急性心不全ってとこだ。彼が死んでいたのは須臾のあの別棟だった」


「何でまた、そんな処に…」


「だから荏原は、須臾が関係しているんじゃないかと探し回って居てさ。実際、須臾は千歳の伝言で樒の元に呼ばれた後、君の前に姿現すまで何処にいたのか誰も知らなかったし、皆で探し回っていたんだ」


「………」


「僕は話の流れで久遠をも探す羽目になったけれど、まあ煌に行って貰ったし。久遠はついでだついで。僕は別の面から須臾を探していた」


「?」


「千歳の身体に、闇の力を感じたんだ」


「え?」


「闇の力は櫂の十八番だ。だけど…須臾は、何故か櫂の闇石を操れる。千歳に残った力の残滓を辿って、僕は須臾に行き着いた。同じ闇の力といえ、やはり微かとはいえ波動は違うし…個性がある。

僕は、千歳の死体に須臾の力を感じたんだ」


「え? でも実の姉だよね?」


「………。須臾の弟を語る姿は、姉とは言い切れなかったよね。美しさばかり気にしていて……」


「櫂に対しても……そうなのかな。須臾が言ってたのは、櫂の美しさばかりだった。どう見ても…櫂という存在を好きなようには思えなかった」


そう、芹霞は翳った顔をしたから、僕は芹霞と繋いだ手に力を込めた。


須臾は…"美醜"に囚われているのか。


「そして久遠は、自らの美しさを呪ってたし。不思議な兄妹だよね」


――玲様、千歳が言ってました。

――"各務の愛の形は歪んでいる。容姿が特殊故に"と。