あひるの仔に天使の羽根を


「もう発作は起きたから、暫く大丈夫だよ」


「笑って言わないでよ。発作ってそういうもんじゃないでしょ!! 本当にもうどうしていいか判らなくなるんだから!! 玲は絶対心配する人間の気持ちなんて判ってない!! 本当に生きている心地しないんだから!!」


拗ねてしまった。


ああ、君は僕を喜ばせる天才だ。


かつて。


恐懼の象徴として起こる発作は、見つかれば更なる母の恐怖の虐待が待っていて。


見つからないよう、一人で対処出来るよう忍んできたけれど。


心配してくれる人間が現れるなんて。


それがこんなに嬉しいなんて。


ああ、昔の僕に言ってやりたいよ。


頑張って耐えて生きてくれて、本当にありがとうって。


芹霞が心配してくれるなら。


むしろ発作を増やしてもいいかなって、思ってしまう。


そうすればきっと、君の頭の中は僕のことで一杯になるだろう。


君は怒るだろうけどね。


そんな僕の横では、芹霞が浮かない顔をして呟いている。


「いつもなら櫂が総指揮とるのに、今回櫂はあんなで玲に任せきり。元々此処に来た時から、自信なさげというか覇気がないというか。いつもの不遜な態度が翳ってたけど、だからって玲に負担かけまくるなんて」


また――櫂、か。


僕の気分は下降する。


「あ、そうだ。須臾の弟が死んだって本当?」


そう芹霞は尋ねてきた。


それが最初に僕に問いかけてきた中身だったらしい。