あひるの仔に天使の羽根を

 

「銀色の光?」



玲の声に俺は頷いた。


「突然銀色の光が水中に差し込んで――そいつらを吸引したんだ」


まるで手品のように。


跡形も無く――消え去った。


まるで幻であったかのように。

俺が記憶する意識はそこまでで。


「銀の光ってよー」


煌が険しい顔をして口を挟む。


「俺も泳いでいて、見たんだわ。それ頼りに泳いだらここに行き着いたというか……」


「……桜も同じです」


「僕もだよ。ということは、銀の光は僕たちを此処に導いたというわけか。"約束の地(カナン)"に」


「ねえ、由香ちゃんは!?」


突然芹霞が騒いだ。


そういえば、居ない。


「ああ、由香ちゃんも居るよ。もう少しで帰ってくるんじゃないかな」


玲がそう芹霞に微笑んだ時、


「ひぃ~~。子供の体力には負けるわ~~」


部屋のドアが開くと同時に、遠坂由香が倒れこんできた。


「由香ちゃん!?」


芹霞が慌てて駆けつけると、


「おお~、神崎。元気そうで何よりだ~」


そして力尽きたようにうつ伏せになった。

「……どうしたんだ?」


俺の問いに、玲は苦笑する。


「ん。ここの家、そしてお前の手当て。ユエちゃんの厚意に甘えさせて貰ったからね、由香ちゃんが遊んであげてたんだよ」


「……ユエ?」


俺がそう眉を顰めた時、


「きゃはははははは」


何とも高い声色の子供の笑い声が響いた。